こんばんは、藤助です。
先日、「奇跡のバナナ」という本を読みました。
どんな本?
どんな本かざっくり説明すると
熱帯の果物であるバナナを、日本でかつ温室ではなく露地栽培で作ることに成功した著者が、どうやってそんなことを可能にしたのか、そして現在どのような活動しているのかということが書いてあります。
しかも、そのバナナは、通常糖度が15~16度程度であるのに対して25度もあるといいます。また、農薬も使用してなく皮まで食べられるというから驚きです。
どうやって可能にした?
どうやってそんなバナナをつくることを可能にしたのかというと、著者が10年もかけて発明した「凍結解凍覚醒法」という方法により可能にしているとのことです。
凍結解凍覚醒法は、特許技術で本書にも詳しくは書かれていませんが、簡単に説明すると
『種をゆっくり凍結(1日0.5度ずつ温度を下げ半年かけてセ氏マイナス60度まで)させ、常温で自然解凍する方法』
ということです。
なぜ凍結して解凍すると日本で育つバナナになる?
なぜ、一旦凍結させて解凍すると日本の気候でも育つバナナになるのかというと、
- セ氏マイナス60度まで冷却すると細胞は完全に壊れてDNAだけが残る
- 植物はDNAから蘇生することができる
- 蘇生した環境下で必要な情報だけをDNAから引っ張り出す
たとえば寒い環境下ならその寒さに耐えて生き残るための遺伝情報
要は、植物はもともとDNAの中に寒い環境でも生き残れる遺伝情報を持っているが、今の環境が暖かければその情報は引っ張り出してこない。なので、一旦すべて壊してDNAだけにして現在の環境に適合する遺伝情報を引っ張り出させるということのようです。
著者は、氷河期の終わりにあたる1万3000年前に、人類がバナナを食べていたという記録から、もともとバナナは寒さに強い植物なのではないかと考えたようです。
そして氷河期にバナナが誕生したとは考えにくいので、氷河期以前からバナナはあり、氷河期に凍結されていたものが、氷河期の終わりに近づき解凍されたのではないかと仮説を立てたようです。
本当に考えることがすごい。
定説にとらわれてはいけない
そんな著者が、本書で次のように述べていました。
著名な大学の研究者が、ある植物の産地に助手を連れていき、一日にどれだけ大きくなって、何日後にはこんなふうになったと記録をとるとします。その記録をデータ化して論文で発表したら、それがその植物の生育の基準になります。
実際には、そうした記録は、そのときだけの特殊な事例かもしれません。でも産地に行って勉強したらこうだったと学者がいえば、それが定説になります。それ以外は間違いだ、ということになるのです。(P52)
植物を相手に仕事をしている私ですが、考えさせられる内容です。
たしかに、この植物にはこういう剪定がいいとか、肥料はこれ、日当たりはこうなど、人に教えてもらったり本を読んで勉強したりしていますが、本当にそれがその植物に対してベストなのかどうかは、常に疑っていかなければいけないのかなと思いました。
おわりに
本屋で、平積みされていたわけでもなく、他の本と一緒に棚に並んでいた本書が偶然目に入り、手に取りました。あまり期待せず読んだ本でしたが、当たりの本でした。
他にも「バナナは3日先の天候が分かる」や「栗の木の親は我が子を判別して育てる」という話など、とても興味深い話がたくさん載っているので、植物が好きな人にはおすすめの1冊です。